とある企業の法的責任(オトシマエ)-(5:対決・解決編)

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9月 182011

ビジネススーツの6名は全て被告側の人間らしい。
被告席には2名、傍聴席に4名。被告席の2名は弁護士かな。  <後で誤りと判明(後述)

っていうか、今日は平日ですよ?俺夏休みだけど。
どう見ても部課長クラスばかり。わざわざ一人数万円掛けてここまで来るなんて、なんかおかしくね?

で、開廷。裁判官1名とその両脇に司法委員が1名ずつ。
最初は被告答弁書に関して、原告から質問はあるか?とのことで裁判官が話を切り出した。

事前に打ち合わせておいた、親父の質問は明快である。

◆もともと事実を認める被告側役職者複数の捺印入り報告書の交付を受けているが、その内容を被告自身が一部否認、一部不知とは一体どういうことなのか?

これに対して、被告は「しどろもどろできちんと答えられなかった」のである。
やはり、と納得しつつも、俄かにシンジラレナイ状況。

裁判官が入れたフォロー「積極的に訴因の存在を認めているわけでないということ?」を肯定していたので、やはり「訴訟戦術としての否認・不知」だったとの推測の確度がかなり高まった。被告発言でも「手続的に否認・不知という答弁書を作った」ニュアンスが出ていたので、事前の推測はほぼ正解だろう。

で、その後で裁判官は被告から和解提案があったことを説明。
……初耳なので、被告は少なくとも答弁書送付の後に作った、ということになる。

開廷時点で司法委員を同席させているので、裁判官も最初から和解を振るつもりだろうとは思っていたが、ここに来て被告提案の和解が出てくるとは、ねぇ。こちらからは訴訟前に和解を振っているのに、それを無視してこれかよ、と正直腹立たしい感じはした。

原告が和解に応じる余地を見せたことで、法廷での話し合いは終了。以降は所謂ラウンドテーブルに場を移す。
ここまでで開廷から15分……って、短っ!

ラウンドテーブルに移動するときに提案の和解内容を見せてもらったが、まぁテンプレ通りの内容である。慰謝料名目ではなく解決金名目での金銭交付を行い、他の債権債務は一切ないことを合意する内容。あとは金額か。

ラウンドテーブルには傍聴人は同席できない。ここからは親父の単独戦闘。
何度か控え室に戻ってきたが……。もうね、爆笑するしかない内容。

◆被告提示金額が低すぎる
「提示金額が低いこと」と「遠路はるばる大人数で来ていること」の整合性が全く取れていない。ここは親父が明確に指摘。司法委員から「この金額は有り得ないですよ」言われ、裁判官からは「今日、お金と手間を掛けて大人数で来ているのに、この提示をするなんて、如何にもお役所仕事ですよ……って、うちもお役所でしたね(笑)」と一人ノリツッコミをされる始末。この裁判官、ノリノリである。

◆終始ワンサイドゲームな話し合い
司法委員は「原告はお金目当てで提訴したわけではないとわかった」と言い、裁判官は「同じことされたら私も原告と同じ対応をしますねぇ」と言う。裁判官や司法委員という、公平・中立な第三者という立場から見てこの意見。……どんだけ被告がアホな対応をしたか、つくづく思い知らされるエピソードである。

◆何のためのその人数?
被告席に座ったのは弁護士ではなく法務部員とのこと。で、傍聴人は営業系の部課長クラス。解決金アップの被告内調整で手間取っていたようだが、そういう決済のために来ているわけでもなかったらしい。そもそもアップって言っても大したことのない金額で、うちの会社なら平社員レベルの裁量でできそうな金額なんだけど……。

こんな遣り取りがされ、被告提示の元金額の倍で決着。
この場で振込先口座番号まで伝えたそうな。

金額的には訴訟での請求額には遠く及ばないが、もともと「この金額は死守しよう」と考えていたベース金額があり、それに基づいて積み増した請求額にしたので、内容としては十分。要は「ベース金額を得るために、請求額を~円にしよう」というやつである。バカ高い請求額にしてもその合理的根拠の説明ができないので、安直な背伸びは禁物、としたがそれも功を奏した模様。ちなみに被告は最初の提示金額(『低い』と言われた金額)の合理的根拠が示せなかったそうだ。救いようがないわ。

最終的に金額に折り合いが付き、和解。ラウンドテーブルの話し合いは1時間ちょっと。
後日和解の書類が届き、被告から解決金の振り込みがされて一件落着、となる。

ちなみに和解は確定判決と同等の効力があるので、

・一事不再理の被告側反証
当たり前だが、原告は同一の訴因に基づいて提訴することができない。被告が「これで解決済み」と示す証拠となる。

・解決金という金銭債権の根拠
万が一、被告が解決金を支払わない場合、原告がその履行を請求する証拠になる。

という性質を有する。……まぁ個人的には「和解文書を額縁に入れて飾りたい」んだけど。

つづく。

とある企業の法的責任(オトシマエ)-(4:決戦の日は今日編)

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9月 182011

これとかこれとかこれで揉めてた件。ようやく片付いた。
結論は「被告申し入れの和解」。内容は実質原告勝訴。

いろいろとツッコミどころ満載だったのでここに書き残そうと思う。
長いので3エントリーに分割。

【前提】

こちらは慰謝料請求の小額訴訟を提訴、被告(某一部上場大企業だ)は、
・通常訴訟への移行を請求
・訴状内容の一部を否認
・訴状内容の一部を不知

との答弁書回答。ちなみに原告はうちの親父で、証拠書類の半数以上は被告から直接面会の上で捺印入りで交付されたもの。訴状内容は当然それに基づくもので、その否認・不知は正直意味不明。こちらが被告交付書類を有印私文書偽造したとでも言いたいのか……と勘ぐりたくなった。

通常訴訟移行とはいえ、第一回弁論は論点整理になるはずだから、聞きたいこと、確認したいことをいくつかピックアップする程度に留めておいた。改めて弁護士を立てる……必要がある内容とも思えないので、原告側は本人である親父が法廷に立つことに。

被告側は大企業だが遠隔地にあるので、顧問弁護士だけ来るだろう、と予想。これがビックリな状況になるとはこの時点では露ほども思わず……。

通常訴訟移行ということで少なからず親父も不安を抱いていたが、

◆被告答弁内容はあくまで訴訟戦術の一環と考えるべきで、鵜呑みにする必要は皆無。
→むしろ矛盾点や合理性に欠く内容を拾い上げ、反論材料とすればよい。

◆通常訴訟移行は被告請求でオートマチックに行われるものだが、正直通常の民事訴訟で扱うべき内容には程遠く、裁判官が最初から和解を振ってくる可能性がそこそこ以上に高い。
→この内容でいちいち通常訴訟やってたら裁判官が大変。というか俺が裁判官なら和解で終わりにする。面倒くさすぎて。

と説明、そのままで行くことにした。

【で、当日】

裁判所に行ったのは両親+俺の3名
裁判所の自販機が爆安でワロタ。120円ジュースが80円、150円ペットボトルが120円とか有り得ないから!

当日の開廷予定が一覧で貼ってあるので見てみると……。俺たちタイム30分。想像以上の短さ。
まぁそれくらいしか話す内容ないかもなぁ……。 <俄かに納得してた。

親父は原告席に着席で、待機。傍聴席で母と二名で待っていると、何やらビジネススーツの一団が……。
えーと、計6名?

……は!?これ全員被告側!?

つづく。

とある企業の法的責任(オトシマエ)-(3)

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6月 262011

よろしい、ならば続きは法廷で。
少額訴訟だけど。

とある企業の法的責任(オトシマエ)-(2)

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5月 282011

下記を内容証明郵便で発信。
原案は親父作、推敲を当方で担当、親父発信。

1.本件に対する企業責任の所在を明確にした、法務部長名義の書面を提出すること。

2.刑事責任と民事責任の双方についての和解文書を作成し、当方へ和解を申し入れること。

3.もし前回の報告書の記載内容(ご容赦賜りたい=謝るだけ)で済ませようと引き続き考えているならば、「その記載内容・対応で法律上問題ないということを顧問弁護士が了承済みである」ことを示した、法務部長と顧問弁護士の署名捺印入り書面を当方へ提出すること。

この会社、コンプラのチェックポイントの1つとして「社会良識に適っていること」を掲げているんだな(Webに載ってるし)。これ自体は企業CSRとしてはテンプレートな範囲。でも、今回みたいなケースで「ごめんなさい許してください」で済ませることって、本当に社会良識に適っているんだろーか(爆)。それ以前の社会常識・ルールにすら適っていないんじゃねーの?というのがこちらの認識。テンプレやポーズだけのコンプラ、じゃ何の意味もないのにね。言うまでもないがこの「おたくの対応、おたくのコンプラに適ってるの?」な話も内容証明郵便に載せてある。個人的には「抉り込むツッコミ」だと思ってる(笑)。

あと、被害者側から「和解を申し入れよ」と言われる時点で「恥」と認識してもらわにゃーな。
こっちから言わせれば「バカなの?」なレベルの話。

前回交渉は法務部の課長クラスが出てきたそうだが、内容から「上長にエスカレーションされていないのでは?」という疑義があり、今回はそこをブロック。書面は法務部長名義で寄越せ、にした。これで先方の「法務セクションでオーソライズされた内容=企業としての対応」であることが明確になる。

ちなみに内容証明郵便は法務部長&コンプラ推進の親玉(=社長)宛にした。ま、本人が開封するとは思えんけど。ただ内容証明+配達証明で送っているので、通達の事実は揺るがない。

以降は先方の出方次第かな。

なんかうちの祖父母宅管轄の営業所から、慰謝料いくら出します?な打診が親父んとこにあったそうだが、「そっちと話すことじゃないから」と突っぱねたそうな。営業所の一存で解決、とかにはしないので、これは正しい判断。そのときは事が有耶無耶になってしまう。本社法務がそうしろ、と指示出しした可能性もあるし。慰謝料云々はあくまで契約書の相手方である本社の法務との交渉な話だ。

さっさと片付ければ余計なコストも手間も掛からないのになー。「長」って付く役職者がちょっと集まって話すだけで潜在コストは数万円。間接部門はコストセンターって認識、あるの? ←やってる仕事との関係で今ここに凄く敏感。

あとは先方の顧問弁護士が常識人であることを祈るばかり(笑)。

余談だがうちのじーさまの+αなお言葉。「大企業で起こりそうな問題だが、あってはならないこと」「こちらが『ド素人』だと思ってナメて掛かってるんだろう」「『ド素人でない(=当方が法学修士であること)』以上は全力で対抗せよ」。こんなこと言う人に寿命の心配なんてしてない(笑)。

とある企業の法的責任(オトシマエ)-(1)

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5月 222011

直接交渉したうちの親父に対して

■社内調査結果とお詫び文

の提示のみ、要は「ごめんなさい許してください」で刑事・民事双方の責任を取ろうとするって、一体どんな一部上場企業なんだよ。本社法務兼コンプラ推進事務局が出てきてこのクオリティだぜ?ごめんで済んだら警察も裁判所もいらねーっつーの。なめてんのか?

◆責任の所在の明示なし
◆「落とし前の付け方」に言及なし

こんな回答をマトモな顧問弁護士がOKするとはとても思えんのだけど……。親父も自分ももはや行為者本人よりこんな回答を寄越しやがった本社法務への憤りの方が大きくなっていたりする。法務部の中でも話が途中で止まっているのかな。とりあえず、

■企業としての責任の所在を明確にすること。契約書の名義が企業である以上、行為者の在籍の有無(ぶっちゃけ数年前に退職済み)それ自体は関係ない。

■刑事・民事双方についての和解文書を作成、当方に和解を申し入れること(当然ながら慰謝料付き)。
→報告書冒頭で「大変なご心労とご心配をお掛けし」とか書いてるくせに、「ごめんなさい」で済まそうとしているところに決定的な矛盾がある。

■もし今回の報告書で片付くと考えているなら、その内容で問題ない(=謝ればOK)ということを顧問弁護士が了承済みであることを書面で出すこと。
→今回の回答そのものが、コンプライアンス上適切には見えないとこちらでは考えているため。民事・刑事双方の責任があるにもかかわらず、こういう対応は果たして企業のコンプライアンス観点で適切なのか?

を、コンプライアンス推進の親玉(=社長)宛に内容証明郵便で要求して迎撃。これでNGならアポ取って先方の本社を親父同伴で強襲(直接交渉)、それでも埒が空かないなら小額訴訟を仕掛けるつもり。不法行為を認める書面自体は既に受領しているから、小額訴訟での負けはこちらには有り得ず、リスクもない。

ちなみに本件を耳にした90歳過ぎの祖父@税理士曰く、「なかなか積めない経験値が積めるぞ」「存分にやれ」「全力で行け」。えらく激励されてしまった(笑)。

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