貴方の要望どおりに応えることが、貴方にとってベストであるとは限らないのだ。
「法科大学院+新司法試験制度」
法科大学院+司法試験改革が上手く行っていない、とのこと。
個人的には驚いてはいない。予想通りの結果だからだ。
法科大学院スタート前の2003年3月に法学研究科(修士)を出た身として、ここに当時のことを書き残しておこうと思う。ちなみに法曹職を目指そうと思ったことはまるでなかったりする(←興味がなかった)。
冒頭、「予想通りの結果」と書いたが、これには以下の根拠がある。
1.法科大学院スタート前時点で、「全法科大学院定員合計」と「新司法試験の合格定員」を見比べ、新司法試験の合格率(7~8割と言われていた)が成立しないことが明らかだったこと。ある意味、規定路線どおりの破綻といえる。
2.人数が増える=仕事が増える、ということは単純に成立するはずはなく、特に新参者であろう新司法試験合格者は、法曹資格取得後に厳しい状況(有体に言えば仕事が回ってこない)に置かれることは容易に想像できたこと。
3.学費が高額(※)、かつ多忙な学事=経済面での負担が大きく、また「2.」の状況から仮に法曹資格が取れたとしても短期間での経済的自立は大変な労苦を伴うことが見えていたこと。
※一部では金持ちしか弁護士になれないと言われているが、これも予想通りの展開。
法曹界に多様な人材を、というコンセプトは素晴らしい。
だが、残念ながらそのとおりに行っているようには見えない。
で、当然ながら法科大学院を出ながらも「あぶれた」人材もいるわけで、この層の活用を、ということも問題になっている。事実、うちの会社でも2009年度新入社員で法科大学院出身者がいるとのことを聞いている(いずれも知的財産部門所属らしい……)。
「人材の活用を」という面では同意できるが、企業における人材施策としては疑問を呈さざるを得ない。
・知的財産部門は率直に言って文系出身者の出番はない。特許明細を書ける人間でないと基本的には務まらない。法律家に技術を仕込むよりも技術者に法律を仕込んだ方が遥かに早く、確実である。
・法学部や法科大学院を出ていなければ、企業の法務関係部門で耐えうる人材ではない、ということはない。スタフで一から仕込む、というのは手段の1つに過ぎない。また、その場合でも営業部門等で顧客対応等実務経験を積んだ方が有益である。
・「企業内に弁護士を抱える」のは選択肢の1つではある。が、「最初から企業で抱え込んでいる弁護士」と「外部で実務経験を積んだ弁護士を雇い入れる」はまるで意味合いが異なる。一から自社内で弁護士を仕込む、というのは、単純にコスト面から言って割に合うとは思えない。
・企業としても、法律専門職で社員を雇い入れるのはリスクが高い。「そこでしか使えない」ことになりかねないからである(本人も他部署への異動を納得するとは考えづらい)。
ストレートに言ってしまうと、法科大学院出身で法曹職に就けなかった者の受け皿は極めて少なく、状況は厳しい。ある意味、人生とカネを掛けた博打になっているのが現状ではないか、と。
個人的には修士課程(博士課程前期)で2年、研究をしていたが、最初から企業への就職を念頭に置いての進学だった(他にそんなことを考えていた輩は皆無だったが)。今でこそ情報システム部門に居るが、法律と完全に縁が切れたわけではない。開発を発注する、外部に作業を依頼する、ということから
■下請法
■労働者派遣法
■契約法一般
はかなり身近である。また、契約法務部門からも異動の打診(内々に、だが)を受けたことがあり、法律系出身ということが何気に今だ何かしらの影響がある。
結論を言ってしまえば、法曹職にならなくても、法律が関与する職種は企業内には少なくなく存在しているということ。特に、企業活動ならではの関わりは企業内に居て初めて生まれるものである。
法学部学生や法学部を目指す方に申し上げたい。刑事/民事など、法曹職でしかやれないことをしたい、ということであれば、法曹職を目指してほしい。もし、企業活動に関わる部分に興味がある、ということであれば、企業就職も悪い選択ではない、ということを知って欲しい。法曹職に就かなければ、法律に関わる仕事に全くタッチできないということはない、のである。
……という状況を反映してか、最近この手の新聞記事・Webニュース記事が多い気がする。
情報処理技術者資格って、予備自衛官補(技能)・情報処理区分の対象資格なんだねぇ。知らなかったよ。